脳梗塞

    脳梗塞の分類

    脳梗塞は

    • ラクナ梗塞
    • アテローム血栓性梗塞
    • 心原性塞栓症

    以上の3つに大きく分類されます。それでは一つずつ説明をしていきます。

    ラクナ梗塞

    脳を栄養する血管のうち、穿通枝と呼ばれる細い動脈(直径1mmにも満たない動脈)が動脈硬化をおこし血管の中が狭くなり最終的にその血管が詰まることにより生じる脳梗塞です。脳梗塞の大きさとしては15mm未満の小さい脳梗塞です。脳梗塞の大きさが小さいとはいえ、症状が進行して麻痺などが強く残ってしまう場合があります。脳梗塞の中で1/3程度を占めます。

    アテローム血栓性脳梗塞

    比較的太い動脈の内側の壁にコレステロール(脂肪)が沈着しプラーク(血管の中にたまったごみのようなもの)が作られ、血管の中が狭くなり、それが原因で起こす脳梗塞です。機序はいろいろありますが、内頚動脈や中大脳動脈など比較的太い動脈が狭くなり脳梗塞を起こしてきます。最近食生活の欧米化などでこのタイプの脳梗塞が増加しつつあります。脳梗塞の中で1/3程度を占めます。

    心原性塞栓症

    不整脈の一種である心房細動や心臓弁膜症、心筋梗塞などで心臓の中に血栓ができ、それが血流にのり脳の動脈を詰まらせて生じる脳梗塞です。血栓そのものが大きいことが多く、脳梗塞の範囲が大きくなる傾向があります。年を重ねるにつれ心房細動をもっている人が増えてきています。ある報告によると、55歳未満では男性0.2%、女性0.1%、それが徐々に年齢とともに増えていき、85歳以上になると、男性11.1%、女性9.1%のかたが心房細動を持っていると言われています。高齢者社会となってきており、このタイプの脳梗塞も増加傾向です。脳梗塞の中で1/3を占めます。

    脳梗塞の症状

    脳梗塞に特有な症状というものはありません。症状だけでは脳梗塞と、脳内出血の区別は困難です。以下に脳卒中としての症状を挙げます。

    • 意識障害(ぼっーとする程度の軽いものから完全になくなってしまう重いものまで様々です。)
    • 半身麻痺(障害された脳と反対側の手足に力が入らなくなります。)
    • 半身感覚障害(感覚がなくなったり、しびれがきたりします。)
    • 言語障害(口がうまく回らなかったり、つじつまが合わなくなったり、言葉が出てこなくなります。)
    • 視野障害(片側が見えなくなったり、物が2重にみえたりします。)
    • 動作の異常(いつもできていることができなくなったりします。)
    • 体や手足のバランス障害(歩いているときにフラフラしたり、手足を思ったところにうまく運べなくなります。)
    • 頭痛、めまい、嘔吐

    最近注目されているものがあります。それは一過性脳虚血発作(TIA)と言いまして、脳梗塞の前ぶれと言われているものです。手足の麻痺や感覚障害、言語障害などの症状が一時的に急に出現しすぐに治るというものです。(一般的には数分~15分程度)この状態を放置していますと、その後20~30%程度のかたが脳梗塞になってしまうと言われています。すぐに病院を受診しましょう。

    脳梗塞の治療

    保存的治療

    外科手術以外で点滴を中心とした治療のことを言います。脳梗塞の治療は一般的には点滴治療が中心となります。血をさらさらにする点滴やお薬、血を固まりづらくする薬を使用します。(脳梗塞のタイプによって使用する点滴やお薬が違ってきます。)その他には脳の腫れを抑えるお薬や脳を保護するお薬を使用します。
    点滴はだいたい1~2週間使用します。内服薬は再発予防で使用します。自分勝手にやめてはいけません。

    脳梗塞の原因はやはり動脈硬化と心臓の問題です。起こさないようにするためには動脈硬化の原因となる、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの厳重な管理が必要となります。また禁煙、飲酒量の制限も必要です。

    現在脳梗塞発症4.5時間以内であれば、血栓溶解剤(アルテプラーゼ:t-PA)が使えます。血栓を溶かすお薬です。血栓がとけて早い時間に血流が再開すると劇的に症状が改善することがあります。またこの薬を使っても血管が詰まったままである場合、血管の中から血栓を吸引して血流再開を目指す治療(血管内治療:プナンベラ)もあります。

    外科治療(手術)

    脳梗塞の大部分は上記の点滴、内服治療が中心となりますが、その中には手術をすることで悪化を防げる場合があります。

    脳梗塞の進行、再発を抑えるために頭皮を栄養する動脈と脳の動脈とをつないで、脳血流を増やす方法(脳血管バイパス術)や、首の動脈(内頚動脈)の厚くなり狭くなった部分の壁(内膜)を除去する方法(内頚動脈内膜剥離術)や、血管の中からカテーテルを使って狭くなった部分を広げる方法(血管内ステント留置術)があります。これらの手術は急性期といって発症間もない時期に行う場合もありますが、多くはある程度時間を置いてこれらの治療を行います。

    また救命目的と言われる減圧術(脳梗塞になった脳の一部を除去ならびに頭蓋骨を外してくる手術)を行う場合があります。この手術は特に心原性塞栓症で行われます。心原性塞栓症は大きな脳梗塞となることがあり脳幹部(生命には重要な部分)を圧迫し生命の危機に陥ることがあります。この場合この手術がなされます。