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モヤモヤ病

モヤモヤ病の最新の診断と治療について
はじめに

モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)は、日本人に多発する原因不明の脳血管疾患です。

発症の年齢分布は二峰性を示し、5歳を中心とする高い山と30~40歳を中心とする低い山を認めます。前者が小児(若年)型、後者が成人型と区別され、その症状とその発症機序が異なっています。

小児型では、脳虚血が病態の主体であり、脳の血流が低下することによる脳虚血発作がみられ、成人型では、もやもや血管の破綻による脳内出血やくも膜下出血などの頭蓋内出血が見られます。

本稿では、モヤモヤ病の特徴、最新の診断法、最新の治療法について述べたいと思います。

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モヤモヤ病の特徴

脳の血液は、左右の頚動脈と脳底動脈から供給されていますが、脳底ではこれらの血管が互いに交通動脈と呼ばれる血管で結ばれ、ウィリスの動脈輪と呼ばれる連絡路が形成されています。この動脈輪を中心とした脳血管に進行性の狭窄・閉塞病変をきたす原因不明の疾患がウィリス動脈輪閉塞症、別名モヤモヤ病です。

モヤモヤ病という病名は、今から40年程前に、脳血管造影検査の所見から名づけられたものです。すなわち、脳底のウィリス動脈輪部の狭窄・閉塞とは対照的に、脳底部から脳に直接穿通する数多くに細い穿通動脈が拡張し、タバコの煙のように"もやもや"とした異常血管網として映し出されたことに起因します(図1)。

今ではこの病名が国際的に広く使用されています(Moyamoya disease)。もやもや血管は、元々ある細動脈が脳血流を維持するために代償性に拡張し、脳底部から脳を貫いて脳表に向かって血流を送るために機能していると考えられています。


図1:脳血管造影検査
右内頸動脈造影正面像、左:正常例、右:モヤモヤ病

モヤモヤ病では、頭蓋内内頸動脈終末部、前(内側)及び中大脳動脈(外側)近位部に狭窄又は閉塞と、その付近の異常血管網(もやもや血管)とが動脈相にて認められます。

我が国におけるモヤモヤ病の発生頻度は年間10万人あたり0.35人といわれ、男女比は1:1.8で女性に多く、約10~15%に家族性発症が見られます。全国年間受療患者数は約6000人(1996年)となっています。病因は未だ不明で、家族発症例では、遺伝的要因の関与が明らかとなってきています。

小児型モヤモヤ病

元気だった子供に突然、脳卒中のような発作(左右半身の脱力・運動障害、ロレツが回らないなどの言語障害、視力障害、意識障害、感覚異常)が一過性に出現する(症状が出てもすぐにもとに戻ります)のが典型的な発症です。その他の症状として不随意運動、痙攣、頭痛などが見られます。

脳卒中のような発作は泣いたり、笛を吹いたり、熱いラーメン・うどんをフーフー吹いて食べたりする時の「過呼吸」により誘発されます。過呼吸状態では脳血管の拡張に必要な血中の二酸化炭素が低下し、もやもや血管も含め脳血管が収縮するために、それまでかろうじて維持されていた脳血流が急に低下し、脳の代謝に必要な酸素の不足により脳虚血発作が生じます。

脳虚血発作は一過性に出現し繰り返す場合が多くみられますが、重症な場合には、脳梗塞を来たし、運動障害・言語障害・知能障害・視力障害などが固定症状として残ります。

成人型モヤモヤ病

成人の場合には、脳内出血・脳室内出血・くも膜下出血などの頭蓋内出血による発症が一般的で、症状は出血の部位や程度により異なり、軽度の頭痛から重度の意識障害、運動障害、言語障害、精神症状まで様々です。

代償性に拡張した数多くの細い穿通動脈(もやもや血管)に血行力学的なストレスが加わり、薄くなった血管壁が破綻すると考えられています。出血の場所と大きさにより後遺症が全く残らない場合から、様々な後遺症が残る場合まであります。死亡例の大多数は頭蓋内出血例であり、頭蓋内出血は長期の予後を悪化させる因子でもあります。

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モヤモヤ病の最新の診断法
核磁気共鳴血管撮影(MRA)、核磁気共鳴画像(MRI)

臨床症状から本症が疑われた際のスクリーニング検査として最適です。早期の確定診断が可能です。ただし、磁場強度が1.0tesla以上の機種を用いることが推奨されています。

MRA(図2)で、頭蓋内内頸動脈終末部、前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞と、大脳基底核部の異常血管網とが両側性に認められる場合には、モヤモヤ病と確定診断されます。また、MRI(図3)では大脳基底核部に2個以上の小孔(flow void)が認められます。


図2:核磁気共鳴血管撮影(MRA)左:正面像、右:側面像
頭蓋内内頸動脈終末部、前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞と、
大脳基底核部の異常血管網(もやもや血管)とが認められます。


図3:核磁気共鳴画像(MRI)
大脳基底核部に異常血管網としての小孔(flow void)が認められます。

脳血管造影

もやもや血管をはじめ、脳への血液の供給路を正確に診断する方法ですが、カテーテルを腕や大腿の動脈に留置し、頸部の各動脈を選択して造影剤を注入することから比較的侵襲性の高い検査といえます(図1,5)。

小児例では全身麻酔が必要であり、病態を熟知した麻酔医の協力が必要となります。手術治療が必要な場合には必須の検査です。確定診断の基準はMRAで述べたものと基本的に同様です。

脳血流検査

脳血流測定にはシングルフォトン・エミッション断層撮影装置(SPECT)やポジトロンエミッション断層撮影装置(PET)などを用いる方法がありますが、いずれも放射性同位元素により標識された脳血流製剤を体内に投与し、脳血流の分布を断層像として捉え、しかも局所の脳血流量や脳循環予備能を定量することが出来ます(図4)。手術の適応や効果を判定する上で不可欠な検査です。


図4:シングルフォトン・エミッション断層撮影装置(SPECT)
術前の安静時脳血流(左)と術後の安静時脳血流(右)を比較すると、
術後両側大脳半球の著しい脳血流量の改善が捉えられています。

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モヤモヤ病の最新の治療法

モヤモヤ病は原因不明の疾患のため根本的治療法は確立されていませんが、脳虚血発作に対しては脳表の血管に対する血行再建術(バイパス手術)が有効です。

また、頭蓋内出血に対しては血腫の除去や出血源の処置が必要となる場合もありますが、もやもや血管からの再出血防止を目的とした血行再建術(バイパス手術)の有効性は現在のところ確立していません。

脳虚血発作に対する血行再建術

小児の脳虚血発作、とくに一過性脳虚血発作の予防のための血行再建術は、直接バイパス術と間接バイパス術に大別されます。

直接バイパス術は頭皮の動脈を脳表の動脈に直接吻合するもので、一般に耳の前縁で触知できる頭皮動脈(外頸動脈の分枝である浅側頭動脈:STA)を大脳半球の外側にある脳表動脈(中大脳動脈:MCA)に吻合する術式が行われます。脳表の血流を確実に改善できるのが利点ですが、脳表の血管径が0.5~1mm以下と細いため、手技に習熟した脳神経外科スタッフによる治療が必要です。

間接バイパス術には、浅側頭動脈を切断せずにそのまま脳表に置く方法(EDAS)や側頭の筋肉を置く方法(EMS)などが開発されていますが、いずれの方法も脳表を血行豊富な組織で覆うことにより自然発生的な血管新生を期待するものです。間接バイパス術は技術的な容易さが利点ですが、血流の改善が100%とは行かない点が問題点です。また、最近では、STA-MCAなどの直接バイパス術にEMSなどの間接バイパス術を組み合わせるのがより有効と考えられ、いろいろな組み合わせ手技が報告されていますが、血流の改善を広範囲にしようとして開頭する範囲を大きくしすぎると、様々な合併症が問題となります。

脳梗塞がすでに生じた領域に対するバイパス術は有効性に乏しいため、一過性脳虚血の段階で早期に診断され、適切な血行再建術が施行されることが重要です。また、手術は全身麻酔で行われ、術中・術後の血圧や動脈血の酸素・二酸化炭素の濃度を適切に維持しなければなりません。そのため、経験のある麻酔科医の協力が是非とも必要になります。

血行再建術後の脳血管造影検査をみると、外頸動脈から脳表の動脈が多数造影され、もやもや血管が縮小しています(図5)。術後では、もやもや血管を介する脳表への血流の供給がいらなくなったと解釈することができます。もやもや血管へのストレスが減じられ、成人期にもやもや血管から出血する可能性も減じられることが期待されています。


図5:脳血管造影検査(血行再建術後)
左:右内頸動脈造影、右:右外頸動脈造影
図1と同一症例の脳血管造影で、
吻合した外頚動脈から中大脳動脈が造影され(右)、
もやもや血管の縮小(左)が認められます。

出血防止を目的とした血行再建術

小児の血行再建術の経験(もやもや血管の縮小)から、成人出血例でも、もやもや血管からの再出血を予防するため、平成13年から血行再建術の出血抑制効果について確認するための臨床研究(厚生労働省特定疾患研究班による)が開始されています。

この研究は、成人出血例を2群(外科群と内科群)に分けて手術効果の有無を確認するものですが、血行再建術後のもやもや血管の縮小により再出血が予防されるかどうかの結果を出すためには、今後10年間の研究継続が必要と考えられています。多くの患者さんの協力なしには、到底成功しえない研究ですが、次世代に対する責任として意義のある研究です。

後遺症に対するリハビリテーション

脳梗塞や脳出血により、運動障害・言語障害・知能障害・視力障害などが残った場合には、早期に運動療法、作業療法、言語療法などのリハビリテーションを開始することが重要です。

適切なリハビリで大きな障害がかなり軽減したケースもあります。特に小児の場合は、リハビリによる回復力が大きく、不適切な指導ではその後の発達成長にも影響を及ぼす場合がありますから、リハビリの専門家に相談することが必要です。

また、最近では様々な高次脳機能障害のために就学や復職が出来ない症例も経験されており、言語療法士や神経心理士などよる専門的な評価と社会的救済が必要と考えられています。

 

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