耳鼻咽喉科

概要

どうしてめまいで耳鼻科なの?

めまいで内科や脳外科にかかったとき、「一度耳鼻科に行って診てもらいなさい」と言われることがあります。耳鼻科といえば、子供の頃に中耳炎や鼻炎で痛い処置をされたり、吸入をしたり、鼻を洗ったり、まぁあまりよい思い出のない方、あるいは全然思い出のない方がほとんどでしょう。耳や鼻やノド、どれもあまり「めまい」と関連なさそうにも思えます。では、なぜめまいの時に耳鼻科を勧められるのでしょうか。

耳の奥、中耳の次にある構造を内耳といいます。内耳は音を感じるのはもちろんですが、バランスを感じる「耳石器(じせきき)」や身体の回転を感じる「三半規管(さんはんきかん)」とがつながって複合した機能を果たす重要な器官です。内耳は身体の中でも一番硬い骨に包まれているということからもその大事さが分かります。発生学的にも耳はまず耳石器ができ、それから発達してきたものと考えられていて、「音」の感覚は実は後からついてきたものだったようです。

たとえば、めまいの病気として有名なものに「メニエール病」があります。めまい、難聴、耳鳴が同時期に起こって繰り返す、というのが典型的な症状です。この病気は内耳の障害で起こるのですが、どうしてめまいと耳の症状が一緒に起こるのか、ここまで読めばお分かりいただけると思います。(めまい自体も「耳の症状」ですが)

ただし、耳から入った情報は音もバランス感覚も同じ一本の神経(聴神経)を伝わって脳に届けられます。この経路のどこに障害が起こってもめまいを生じます。もちろん、脳の障害もこれに含まれます。ですから、めまいの診療では耳鼻科だけでなく、脳外科や脳神経内科などとの緊密な連携が必要です。繰り返したり、長い間よくならなかったり、違う症状が起こってきたりしたときには、特に脳のチェックも行ないましょう。

薬剤性味覚障害について

味がわからなくなったのは薬のせい!?
「料理の味がわからない」、「何を食べてもしょっぱく感じる」、「自分の味見に自信が持てなくなった」などのお悩みで受診される方がいらっしゃいます。このような「味覚障害」の症状で病院を受診される患者さんは、年間約14万人といわれています。

このような症状の原因は、いろいろ調べても分からない場合も多くありますが、実は他の病気で飲んでいる薬が悪影響を及ぼしていることがあり、その割合は味覚障害全体の1~3割程度に上るとされています。

現在、服用中のお薬の副作用に「味覚障害」が含まれているかお調べします。

「顔の麻痺」でなぜ耳鼻科?

「顔面神経麻痺」。顔の動きが悪くなる状態、およびその病気です。脳神経外科に受診したところ、耳鼻科受診を勧められたとお見えになる患者さんがしばしばいらっしゃいます。顔面「神経」麻痺なのに、なぜ脳「神経」外科でなく、名前に神経の文字のない『耳鼻科』なのでしょうか?
それを説明するには、顔の動きが悪くなる原因がどこにあるかを考える必要があります。

「顔面神経」は脳からの指令を顔の筋肉に伝える働きをする神経です。この神経は脳から出た後、頭蓋骨の中耳の部分を通り、耳の後ろ奥の方から出てきて顔面の筋肉につながっています。
顔面神経麻痺では、このうちの中耳を通る部分の神経に炎症が起こることによって麻痺が生じることが多いとされており、そのため「顔面神経麻痺は耳鼻科へ」ということになるのです。

因みに、顔に力が入らなくなるのでなく、要らない力が入ってしまったり、動きが出てしまう病気に「顔面けいれん」というものがあります。
この病気は顔面神経が脳から出た後、中耳に入る前の部分で、近くを通る血管などのぶつかるために起こるとされており、耳鼻科でなく脳神経外科の担当となることが多い病気です。

顔面神経痛?

顔の動きが悪くなり、「顔面神経痛」とおっしゃってお見えになる方がいらっしゃいます。ただ、顔面の動きが悪くなる「顔面神経麻痺」では顔に痛みが出ることはあまりありません。というのは、顔の神経は2つあり、「顔面神経」は動きの神経で、痛みなど「感覚」の神経は三叉神経と言う、顔面神経とは別の神経だからです。なので、顔に起こる神経痛は「三叉神経痛」という病気で、「顔面神経痛」という病名はありません。

突発性難聴

耳の穴も鼓膜も中耳も何ともないのに、突然片耳の耳鳴が起こったり、聞こえなくなる病気のうち、最も多いのが突発性難聴と言う病気です。中耳の奥にある「内耳」が原因不明に侵される病気です。原因不明ですが、早期治療により1/3程度の方が完治するとされています。治療は発症早期しか効果が見込めず、そのため、早期の受診が望まれます。

2017年6月7日更新
耳鼻咽喉科 副部長
小西 正訓