頸部内頸動脈狭窄症は、冠動脈狭窄症 (狭心症や心筋梗塞の原因) や大腿動脈狭窄症 (一時的に足が動かなくなる間歇的跛行症の原因) などと同様に、動脈の内腔を覆う膜 (内膜) が、アテローム硬化によって肥厚し、動脈の内腔が狭まる病気です。狭窄の進行によって、この狭窄部から血栓の一部がはがれて脳の小血管を閉塞したり、狭窄の末梢の血流の勢いが低下し (循環不全)、様々な神経症状が出現しますが、症状は長続きせず短時間に元に戻るのが普通です。片麻痺や言語障害が一時的に生じる場合を一過性脳虚血発作、視力障害が一時的に生じる場合を一過性黒内障と呼びます。しかし、これらの症状は脳梗塞の“前ぶれ”の症状である場合が多く、放置することは危険です。

 頸部内頸動脈狭窄症は、これまで欧米人に多く、日本人には少ない病気でしたが、食生活の変化に基づく高血圧症や糖尿病、高脂血症などのリスク要因の増加とともに、その有病者が急速に増えつつあります。また、最近では、診断機器の進歩と普及により、無症状の段階で見つかることも多くなっています。頸動脈血管エコー検査や磁気共鳴断層画像を用いた血管造影 (MRA) 検査では、造影剤やカテーテルを用いることなく、外来でも確定診断が可能です。

 頸部内頸動脈狭窄症に対する血栓内膜剥離術は、アテローム硬化により肥厚した内膜の部分を、動脈の筋層である中膜から剥がし、一塊として切除する方法です。手術は全身麻酔下で行われますが、頸動脈を動かすことによって血栓の一部が末梢に飛散したり、頸動脈の血流を一時的に遮断しなければならず、手術により新たに脳梗塞を生ずる危険があります。したがって、手術の適応基準が厳密に設定されています。狭窄の度合いについては60〜70%以上の狭窄が対象となります。又、手術チームの技量も重要で、合併症のリスクが、有症状例に対しては5%以下、無症状例に対しては3%以下でなければ手術の効果は期待できません。手術の成績が問われる手術ですから、専門のチームが必要となりますし、手術成績も開示されなければなりません。