コイル塞栓術 | 脳神経外科の病気 | 病気の解説 | 札幌の中村記念病院

病気の解説

脳神経外科の病気

コイル塞栓術

前大脳動脈瘤のコイル塞栓術 60才男性、未破裂前大脳動脈瘤

手術前

手術後(動脈瘤は消失)

コイルの形状
脳血管内治療について

皮膚を切開したり、開頭手術を行わずに、脳の疾患、脳血管障害を治療する新しい手術法です。

脳血管造影という検査をご存知でしょうか、これは脳の血管の状態を、造影剤という薬を使って撮影する方法です。脳血管内治療とは、この脳血管造影から発展した方法で、カテ-テルの中に、さらに細いカテ-テルを入れ、病気の部位まで(頭の中の血管まで)進めていき、色々な薬や道具を使って病気を血管の中から治療する方法です。

例えば、脳腫瘍の場合には、腫瘍を栄養する血管の中までカテ-テルを挿入し、栄養血管を詰めて血液を流れなくしたり、脳塞栓で血管が詰まった場合には、詰まっている血液の固まりを溶解 (血栓溶解療法) し、血管を再開通させて脳梗塞にならないようにしたり、血管の細くなっている部位を風船で拡げて (バルーン拡張術) 流れを良くしたり、脳動脈瘤を血管の中からコイルで塞栓したり、脳動静脈奇形の出血源を治療して、出血が起らないようにする治療です。

この治療法の利点は、一般的な開頭術による外科手術に比べ、患者さんに加わる侵襲が極端に少ないこと、外科手術での治療が困難な部位でも、到達が可能であること、頭蓋骨を開けないので、周辺の脳への影響が無いこと、総じて入院期間が短いことなどです。

1990年代に入り、治療器具の進歩改良に伴い、急速にその適応が拡大し、技術的な進歩とも相まって21世紀にふさわしい新しい治療として確立しつつあります。

関連リンク

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脳動脈瘤の血管内治療

脳動脈瘤の塞栓術は離脱型バルーンでの治療をはじめ種々の試行錯誤の後、1992年GDC(Guglielmi's Detachable Coil)の開発によってその症例数は飛躍的に増加しました。

我が国では1997年3月より臨床での使用が可能となり、現在まで3,000例以上の症例がこの治療法で治療されています。この治療法で治療可能な動脈瘤がどうかの判断には血管造影での詳しい検討が必要です。

脳動脈瘤のコイル塞栓術模式図

1:マイクロカテーテルの挿入

2:コイルでのフレーミング

3:完成図

この治療法の利点は、一般的な開頭術による外科手術に比べ、患者さんに加わる侵襲が極端に少ないこと、外科手術での治療が困難な部位でも、到達が可能であること、頭蓋骨を開けないので、周辺の脳への影響が無いこと、総じて入院期間が短いことなどです。

64才女性 破裂前大脳動脈瘤のGDCによるコイル塞栓術

A:手術前、前大脳動脈の血管攣縮を伴っている

B:塞栓術直後、脳動脈瘤は造影されなくなった

C:脳動脈瘤の形状にそったコイル陰影(矢印)

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脳梗塞に対する脳血管内治療

脳血管内手術は脳梗塞の原因となる血管の閉塞や血管の狭窄についても治療の方法として可能性があり、一部の病気についてはその有効性を確かめるために全国的な大規模臨床試験が行われています。

脳血管閉塞の脳血管内治療
  • 脳塞栓症
    不整脈などが原因で心臓に出来た血栓が脳の血管に飛んできて、脳血管を閉塞させる病気があります。脳塞栓症と診断された病気がこれにあたります。何かをしていて突然に手足の麻痺、言語障害などで発症するのを特徴とします。
  • 局所線溶療法
    脳塞栓症の血栓に、動脈の中を通して血栓まで誘導したカテーテルから、血栓溶解剤(ウロキナーゼ)を直接注射して、血栓を溶かし、閉塞した血管を再開通させる治療法。脳梗塞になる前の脳を助け出して脳梗塞にならないようにする治療法で、麻痺などの症状も改善します。
  • 局所線溶療法の適応
    現在、この治療法が有効と考えられるのは、1)発症からの時間が短いこと(6時間以内)、2)中大脳動脈の閉塞であること、3)CTにて脳梗塞が出でいないこと、などが挙げられています。脳梗塞を未然に防ぐ画期的な治療法として、多くの患者さんが脳梗塞にならずに社会復帰してきましたが、いままでは試験的な治療法として一部の病院でしか行われていませんでした。現在、その有効性を確かめるために全国的な大規模臨床試験、MELT-Japan試験が行われています。当院では2002年1月にこの臨床試験に参加することが病院内の倫理委員会で認められ、この臨床試験の中核として重要な役割を担っています。
右中大脳動脈塞栓症の局所線溶療法

A:右中大脳動脈の閉塞

B:マイクロカテーテルからの造影

C:再開通した脳血管

D:治療前の側面像

E:再開通した後の側面像

左片麻痺と構音障害は治療直後から著明に改善した。

脳血管狭窄の脳血管内治療
  • 脳動脈狭窄症
    脳の血管が動脈硬化を原因として細くなると、その先の脳の血流が悪くなり、ある一定の限度を超えると脳梗塞になってしまいます。薬剤による治療が基本ですが、外科治療としてバイパス手術なども行われます。脳血管内手術による治療は、心臓の血管狭窄である冠動脈狭窄に対する風船療法(PTCA)と同じ方法で、バルーンカテーテルで血管拡張術、血管形成術が行われる場合があります。
  • 頸部内頚動脈狭窄症
    もっと大きな血管、首の部分の頚動脈で、脳へ行く血管が動脈硬化で細くなることがあります。脳梗塞の原因になり、治療が必要です。薬剤による治療と、一定以上の狭窄は外科治療(内膜剥離術)が行われます。この部分の脳血管内手術はステントを用いての血管形成術です。現在は未だ試験的な治療法ですので、内膜剥離術に危険のある患者さん、心臓も悪い患者さん、内膜剥離術後の再狭窄など限られた症例が対象になっています。現在、米国ではステント治療と内膜剥離術の比較試験が行われています。

動脈硬化による血管の狭窄

ステントで治療後の模式図

実際に使われているステントの模式図
症例:75才男性 右内頚動脈狭窄

手術前

手術後

ステントの形状
内膜剥離術後6ヶ月にて再狭窄90%でステントを用いた頚部血管形成術を施行した。手術後狭窄は改善、その後の経過でも再狭窄は認めていない。

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脳血管内治療に関するQ&A
脳血管内手術はどんな病気の手術法ですか?

脳の血管の異常、病気が対象になります。脳動脈瘤、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、脳塞栓症、脳動脈狭窄症、脳腫瘍、脊髄動静脈奇形、脊髄硬膜動静脈瘻などです。

"頭を切らない手術"と聞いていますが本当ですか?

本当です。血管の中からカテーテルを使用して手術するので、血管造影検査のときと同じように一部分で血管を穿刺するだけです。

カテーテルとは何ですか?

日本語では導管と訳される薄く長い管で、その中を造影剤、薬剤、コイルなどを通して病変部まで運びます。いろいろな太さや長さがあり、風船のついたバルーンカテーテルといわれるものもあります。脳血管内手術に用いられるのはマイクロカテーテルと呼ばれる最も細い管です。

麻酔は必要ですか?

ほとんどの手術は血管を穿刺する部分のみの局所麻酔だけで手術可能です。長時間になる手術や、手術中に動かない様にする必要のある手術、血圧を制御する必要のある手術は全身麻酔で行います。

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脳動脈瘤のコイル塞栓術
術前評価

原則、治療の前にあらかじめ、脳血管造影検査を当院で行います。コイル塞栓術では動脈瘤は閉塞し、動脈瘤周囲の血管は閉塞しない事が重要です。そのためには、撮影の角度が重要で、血管内治療を行う医師が確認する必要があります。このため、他の病院で既に行っていても、当院で再度検査をし直す事が多々あります。

全身麻酔

デリケートな操作になる為、患者さんが動か無いように、常に全身麻酔で行います。局所麻酔では患者さんの緊張も強く、ストレスが多くなります。
麻酔科医が、全身管理をしてくれる為、術者は手術に集中出来ます。欧米でも普通は全身麻酔で行います。手術時間はおおむね2~3時間です。

血管内治療用、バイプレーン DSA 装置

安全に脳血管内治療を行う為には、二つの異なる方向から、同時に血管を撮影出来るバイプレーン DSA 装置が必須です。非常に細かい血管も鮮明に描出できる、シーメンス社製フラットパネル、バイプレーン DSA 装置を使用しています。

入院期間

約1週間。月曜の手術であれば前週の土曜か、金曜に入院し、手術を行った週の金曜に退院します。水曜の手術であれば前日火曜に入院し、翌週月曜に退院します。

経過観察

コイル塞栓術では、経過観察は重要です。治療後にコイルの状態が変化する事が有るためです。 6 ヶ月後か1年後に脳血管造影検査。その他、定期的な MRA 検査も必要になります。

内服薬

治療予定日の5日前から、脳梗塞予防薬の内服を開始します。術後は、1ヶ月程度継続します。ステントを併用した場合には原則 6 ヶ月以上内服を継続して頂きます。

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脳梗塞の血管内治療に関するQ&A
脳梗塞の血管内治療にはどんなものがありますか?

閉塞した血管には局所線溶療法が行われます。閉塞した血管や、発症からの時間、治療前の検査などで適応を決めます。血管の狭窄にはバルーンカテーテルでの風船療法や、ステントを用いた治療があります。

倒れてからすぐに運ばれないと治療できないと聞きましたが?

そのとおりです。血栓を溶かす局所線溶療法では治療の開始が6時間以内でなければなりません。

6ヶ月前に脳梗塞になりました。現在も左手が不自由です。脳血管内手術の治療はできるのでしょうか?

残念ながら、症状の回復に結びつく急性期の治療法は適応になりません。血管造影などで血管の狭窄など、脳梗塞の原因になるものがあれば、次の発作を予防するために治療の対象になることがあります。

ステントとはどんなものですか?

ステンレスや、ニッケルチタン合金などの金属で出来た筒状の構造をしたもので、拡張した血管内腔を保持するための器材です。バルーンカテーテルで膨らませるタイプと自分で開いて拡張するタイプがあります。心臓の冠動脈や、四肢の血管の狭窄にはすでに多くの症例で用いられています。